世に問う!言わずにはいられない
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203.二重被爆 2015年7月30日
『人間筏』という歌集がある。
広島と長崎の2度に渡る被爆を体験し、後遺症に苦しみながらも原爆の語り部として2010年1月4日に永逝された山口彊さん上梓の短歌集である。
2006年放映のドキュメンタリー映画『二重被爆』の後半に歌集の一部(以下の4首)が紹介されている。

−大広島炎え轟きし朝明けて川流れ来る人間筏−
−ピカドンに身体焼かれし傷の跡老いて薄れて今日広島忌−
−くろぐろと数かぎりなき佛たち真夜立ち上がる原爆図より−
−うち重なり灼けて死にたる人間の脂滲みたる土は乾かず−

4首目の結句に「土は乾かず」とある。死者の無念が、脂と一緒に滲み込んだ土は永久に乾くことはないだろう。

短歌に興味のない人たちにとっても、その悲惨な光景が目の前に展開し、おそらく胸が締め付けられるだろう。心底から無念を知り、理解できる哀歌であり酷歌とでもいえようか。
1首目の結句「人間筏(いかだ)」は、山口さんが1945年8月6日、仕事の為の広島滞在の折り、広島型原爆(ウラン235)の投下により、14万人もの尊い命が犠牲になった。

その死体が広島市街を流れる川を埋め尽くしていたそうだが、対岸に渡るにもその死体の上を渡らなければならない状態だったという。その様子が、まるで筏のように観えたとのことだった。
あまりに悲惨で、あまりに酷い光景だったに違いない。

その筏のように川に浮かぶ死体の殆どが、何の罪もない一般市民、まったくの非戦闘員だった。また、路上では子どもや女性たちがまるで幽霊のように、高熱で溶かされ、皮膚が垂れ下がった状態で泣きながら爆心地から逃げてくる様子が、今でも脳裏から離れないと話していた。

山口さん自身も、投下時には爆心地から3kmほど離れた場所におり、被爆し、大火傷を負ったとのこと。病院で応急処置を済ませ、家族が待つ長崎へ急いだが、広島投下の3日後の8月9日(午前11時2分)に長崎型原爆(プルトニウム239)の投下により、2度目の被爆を余儀なくされたとのことだった。

山口さんと同じように、広島、長崎と二重に被爆を体験した人たちが他にもいたようだ。映画に登場する元同僚の佐藤邦義(撮影当時87歳)さんや岩永章(撮影当時86歳)さんもその辛い苦しい体験をし、佐藤さんが云うには、アメリカの正義か否かを問いたくも無いが、戦争を終結させる為に、原爆を投下したと思うが、なにも長崎にまで、2箇所も落とす必要があったのかと、沈痛な面持ちでこぼしておられた。
勿論本来ならば一発でも許されることではないと思うのだが、(戦争の酷さ、何でもありの無分別さを物語っている)要は実験の為に2種類の原爆を試したかったということだろう。正しく人体実験以外の何ものでもない。

長崎では死者7万4千人、爆心地から500mのところにあった浦上天主堂では多くの聖職者が犠牲になった。折り重なるように爆死したそうだ。
当時のアメリカは戦争に勝つことが目的であって、聖職者を含め、或いは非戦闘員如何に拘わらずどれだけ多くの人間が死のうと死ぬまいと、それは単なる「付随的な出来事」だととらえられてたようだ。実に悲しいことである。

70年前の第二次世界大戦当時のみならず、近年のアメリカとて、湾岸戦争やイラク戦争では、当時の両ブッシュは原爆を保有していない国に対しても、原爆投下の可能性を示唆したとして各国の疑念や義憤をかった。
次の大統領選も1年4ヶ月後に迫っているが、形勢は共和党に傾きつつあるとの見方があるようだ。因みに前出の両ブッシュもまた共和党員だった。そんな傾向を理解しながらも、日本は今、集団的自衛権を正当化し、アメリカの片棒を担ごうとしている。本当にそれで良いのだろうか……。

国立長崎原爆死没者追悼平和記念館には、被爆者による11万数千編もの体験記が保管されている。元・長崎放送の伊藤明彦記者が収録した951本の全国にいる被爆者の肉声が入ったテープもある。
日本は唯一の被爆国であり、原発による被曝国である。
日本の大きな役目、役割として、世界に向け、原爆の非、原発の非、そして戦争の非を強く強く訴えていく必要があるのではないだろうか。




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